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水口曳山祭天神町見送り幕

みなくちひきやままつりてんじんまちみおくりまく

概要

水口曳山祭天神町見送り幕

みなくちひきやままつりてんじんまちみおくりまく

その他 / 近畿

不明

17~18c

水口曳山祭りの際、天神町曳山の見送り幕として飾られるもので、吉祥詩歌八仙人図刺繍 (きっしょうしいかはっせんにんずししゅう)と呼ばれる。 図柄は、寿老人と八仙人、梅や松が描かれ、不老不死と長寿を祝う文様となっており、全体的に詩文が記されている。刺繍を施している裂地は無地の綴織地が用いられ、縦に三枚を縫合して一枚の画面に仕立てられ、上方には三枚を通して横縞が織り出されている。つまり、当初からこのような刺繍作品を作るために計画して織られたものと考えられる。また、素材に用いられている経緯糸が高級絹糸ではなく木綿糸であり、このことが一般に朝鮮製と通称される根拠となっている。                                                       刺繍技法:八仙人の人物は、和紙に墨描下絵をして置き、その上から直繍いをしている。また文字の刺繍の下描きも墨で骨描きをしてその中を墨で塗りつぶして、その上を直繍いして、字の書体は非常に上手である。刺繍技法は多くの糸が剥落していることから詳細にはしれないが、平繍いと纏い繍を主に一部に相良繍や刺し繍い、唐撚糸などの使用が認められ、その上へ随所に線描写を兼ねた切付押え繍の表現が行われている。日本の桃山刺繍に似た雰囲気があり、梅の花などに見られる桟俵繍いの古い刺繍技法が残ってみるのも特徴的である。人物の沓と冠の黒色は当初からの墨描きの箇所もある。牡丹と鳳凰、瓢箪、唐扇、文字は紙下地を置かずに刺繍をしている。大きな幕類などで切付刺繍を用いる場合は紙下地とする例は常套ではあるが、薄物の直繍いの場合に紙下地を用いるのは、日本ではやはり桃山刺繍など古い例が一般である。また、刺繍下絵に描かれている岩の墨絵が古様であり、さらに左右縁の八仙人の容姿が明時代刺繍の描写と様式を残していると思われ、中央下方の鳳凰や牡丹図も明代後期から清初期の様式が伺え、さらに刺繍技法と全体に鮮やかで明るい色調と配色においても古様な表現が見られる。とくに、本幕の鳳凰の図の描写表現は、京都祇園祭・鶏鉾の朝鮮綴の鳳凰図描絵とよく似ていて類似性が見られる。因みに鶏鉾の朝鮮綴には「寛永拾五年」の寄進銘があるが、本幕の製作期はそこまでは遡らないだろうと考えられる。

全体 縦: 303cm、 横: 177cm
 本地 縦: 181cm、 横: 118cm

1点

甲賀市指定
指定年月日:20120927

有形文化財(美術工芸品)

本刺繍の製作地と製作期であるが、17~18世紀初め頃の南中国の作品に通じる技法や作調を見せるもののそうした類品がなく、また朝鮮李朝期の製作とされるものの現在の韓国に類似の染織品が全く見られず、判断と検討を難しいものとしている。内幕として使われている通称・朝鮮綴の幕と同じく入手されたものではないだろうか。刺繍糸の剥落など損傷が極めて著しいのが惜しまれるものの、本作品は他に類例がないと共に大変に秀作であり、希有かつ貴重な作品である。また本幕には補修痕がなく、当初の状態をそのまま残しており、製作技法を知ることができる点でも貴重であり、指定して保存、活用を図る必要がある

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キーワード

/ 刺繍 / / 技法

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